サックス吹きのフレックス退社

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これだけは知っておきたい合奏用語かんたん解説!! 第2回 チューニングの方法(ピッチ合わせ)

指揮者「そこチューニング(ピッチ)合ってないな。
    音鳴らすからちょっと一人で吹いてくれる?

奏者(え!!みんなの前で一人で吹くの??!!)

 

皆さんこんにちは!

このブログの筆者のドミトリーです!(^^)/

 

このシリーズでは合奏用語解説と銘打ちまして、吹奏楽の合奏でよく使われる言葉について解説をしていきます。

初めて合奏に加わる人にもわかるよう簡単に解説しますので、この記事を読んで指揮者の言っていることをどんどん理解していきましょう!(^^♪

 

前回の第1回では、「ドイツ音名」について解説しました。

「ベー」ってなんだ?という人はぜひご一読ください。 

dormitory0108.hatenablog.com

 

さて、第2回は「チューニング」について解説します。

おそらく「チューニング」は初心者にとっての最初にぶちあたる壁だと思います。

しかも冒頭のやり取りのように、合奏中に突然一人で吹かされるなんていう地獄もあります。

1年以上練習した中級者レベルの人でも、「チューニング」は難しいし、合奏では嫌な時間と感じている人も多いでしょう。

 

今回は

・ そもそも「チューニング」とは何なのか

・「チューニング」は何のためにやっているのか

・「チューニング」をうまく乗り切るコツ

・「チューニング」が怖くなくなる練習方法

について解説していきます。

 

この記事を読めば、もう「チューニング」は怖くない!

基礎合奏を涼しい顔して乗り越えることができるようになります。

初心者だけでなく、「チューニング」恐怖症の中級者の人にもぜひ読んでいただきたい内容です。

 

 

ーーー簡単な自己紹介ーーー

私は現在とある一般サークルのバンドで指揮者をしています。

しかしこれまで音楽の勉強を真面目にやったことがない「愚か者」でした。

ドラッカーの本を読んで、これを猛省し、現在は音楽の勉強をするようになりました。

ここでは音楽初心者から経験者まで、ご自身の音楽活動に役立つように、私が勉強したことをわかりやすく発信していきます!

 

dormitory0108.hatenablog.com

 

Ⅰ.「チューニング」って何?

まずは「チューニング」とは何なのかについて解説しましょう。

演奏会や合奏の最初によく行われるチューニング。

これは一体何をしているのでしょうか?


Orchestra Tuning オーケストラのチューニング

1.チューニングは何をしているの?

チューニングでは各楽器の

「音程合わせ」

を行っています。

 

実は、演奏する場所の気温や湿度、奏者のコンディションなどが影響し、
楽器の音程は変化してしまいます。

 

後述しますが、音程がずれていると綺麗なハーモニーが作れません。

そのため、それぞれの楽器の音程を合わせる必要があるのです。

 

つまりこのチューニングは、合奏や演奏会では必ず行う作業となっています。

 

2.なんの音に合わせるの?

オーケストラでは「A(アー)吹奏楽では「B(ベー)の音を使って、みんなの音を合わせます。

 

ちなみに、よく「今日のチューニングは440でお願いします」というようなやり取りがありますが、これは「1秒間に440回振動するAの音を基準にしてね。」という意味です。

 

人間の耳は結構いい加減で、420~450Hzくらいの音はすべてAに聞こえます。
※1秒間に振動する回数を「周波数」といい「Hz」という単位で表します。

 

よって、どの周波数のAを基準にするのかを決める必要があるんですね。

 

<補足~音の表記について>

A(アー)やB(ベー)はドイツ音名というものです。

よくわからないという方は「第1回ドイツ音名と実音」をご一読ください。

dormitory0108.hatenablog.com

 

3.基準の音は誰が吹くの?

基準の音を出すのは、誰でも構いません。

しかし習慣的に決まっている場合もあるので、ここでは演奏会の場合と練習の場合でよく行われるチューニングの担当を説明します。

 

演奏会の場合

演奏会ではほとんどの場合オーボエが基準の音を吹きます。

これはオーボエの音はよく響いて聞こえやすいことと、オーボエは楽器の構造上音程をあまり変えることができないという理由からです。

オーボエがいない場合は、オーケストラでは第1バイオリン吹奏楽なら1stクラリネットの音に合わせることが多いです。

 

練習時

合奏などではハーモニーディレクターで音を出すことが多いです。

ずーっと同じ音を吹き続けるのはしんどいですからね。( ;∀;)

機械に任せてしまうことが多いです。

 

Ⅱ.「チューニング」の目的とは?

そもそもチューニングは何のためにやっているのでしょう?

 

チューニングの目的は

「きれいなハーモニーを作るための下準備」

と言えます。

 

あまりピンときませんね。(・・?

 

チューニングが音程合わせであることは先ほど説明しましたが、なぜ音程を合わせることが、きれいなハーモニーの下準備になるのでしょうか?

 

1.チューニングによるハーモニーの違い

百聞は一見に如かずとよく言いますが、

ここでは百見は一聞に如かずということで、まずはチューニングが整っていない場合の演奏を聞いてみましょう。

 

<チューニングが合ってないカエルの歌>

なんかウネウネしていて濁ったハーモニーになっていますね。

このウネウネのことを「うなり」と言います。

一方、チューニングを合わせるとどうなるのでしょう?

 

<チューニングが合っているカエルの歌>

整っていてすっきりとしたハーモニーですね。

このように、チューニングが合っていいない状態ではハーモニーが合わず、練習にもなりません。

演奏会ではお客さんに不快な思いをさせてしまうことになります。

 

よって、本番の直前ではもちろんのこと、合奏前にもチューニングで音程を合わせることで、きれいなハーモニーを作る準備が重要になるのです。 

 

チューニングが合っていない状態では「うなり」が発生してしまい、ハーモニーがきれいに整いませんでした。

どうして「うなり」は発生するのでしょう?

せっかくの機会なので、少し長くなりますが詳しく解説したいと思います。

 

2.どうして「うなり」が発生するのか

うなりが発生する原因を一言で説明すると、
『周波数のずれにより周期的に音の大きさが変化する』からです。

その時の波形はこんな感じ。

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こいつが「うなり」の正体だ!

波形?音の大きさが変化??(。´・ω・)?

う~ん、なんとも難しそうな話ですね。

 

でも安心してください!

以下の3つのポイントを知れば簡単に理解できる話です。(^^)/

・音は空気の振動で波であること

・波形の見方

・波の重ね合わせ

では早速ひとつずつ解説していきましょう。

 

(1)音は空気の振動で波である

そもそも音とは何なのでしょうか

 

図書館で借りてきた本から引用すると、

音は物が振動することで発生します。この振動が空気を伝わって私たちの耳に届き、耳から脳へ信号として送られ、脳で<音>だと判断されます。

振動は空気を押したり引っ張りたりすることで、波のような動きを生みます

と書かれています。*1 

音である空気の振動は、押引きによる振動で隙間が少ない「密」の部分と隙間が多い「疎」の部分からなる波です。

これを「疎密波」や「縦波」と言い、その様子は波形によって表すことができます。

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音が聞こえる仕組み

「音」=「空気の振動」ということはお分かりいただけましたでしょうか?

そして空気の振動の様子は「波形」で表現することができます。

つまり波形を見ればどんな音なのかわかるということですね。

 

(2)波形の見方

音は「強弱」「高低」「音色」の3つの要素からできています。

この3つの要素を表したものが「波形」です。

 

・強弱

強弱は振動が最大になる位置までの幅(振幅)で表現します。

振幅が大きいと大きな音(音①)、振幅が小さいと小さな音(音②)となります。

・高低

高低は1秒間に振動する回数(振動数)で表現します。山か谷の数を数えればOKです。

振動数が高いと高い音(音③)、振動数が低いと低い音(音①)となります。

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波形と音の関係

・音色

音色は波の形で表現します。

バイオリンとフルートの音は同じ音程でも異なって聞こえます。
それは波の形が異なるためです。

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 小村 公次 著「音楽のあゆみと音の不思議4 音楽のしくみとルール」6Pより引用

 

波の形は異なる音を重ねることで変化します。

実は、楽器は非常にたくさんの種類の音を同時に出していて(倍音やノイズ)、それらが重なることで、非常に複雑な波形をしています。

これについては次の波の重ね合わせで詳しく解説します。(*^-^*)

 

<補足~倍音と音色の関係について~>

例えば、楽器で「ド」の音を吹いたとすると、その中には小さな音ですが、1オクターブ上の「ド」とその上の「ソ」、2オクターブ上の「ド」とその上の「ミ」とその上の「ソ」とその上の「シ♭」・・・というような音が含まれています。

この小さな音たちを「倍音」と言って、それぞれの倍音の周波数は、基準の音の周波数の2倍、3倍、4倍・・・となっています。

最終的には、楽器の部品の振動などから出るノイズなども加わって、これらを重ね合わせると、上の図のような複雑な波の形になるのです。

また、楽器ごとでそれぞれの倍音の大きさが異なります。

よって、倍音が組み合わさってできる波の形も変わるので、音色も異なって聞こえるのです。

 

(3)波の重ね合わせ

複数の音が同時になっている場合、それらは重なり合って、波の形が変化します。

チューニングのうなりも音の重なりによって発生しています。

 

では、実際に2つ以上の音が同時に鳴ったらどうなるのかについてみていきましょう。

 

2つ以上の音が鳴った場合、合成音の波形はそれぞれの波形を単純に足したものになります。

↓の図を見ると、それぞれの波形が足され、少し複雑な波の形になっていることがお分かりいただけると思います。

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音の合成と分解

音1

音2

音3

合成波

 

また、波は分解することもできます。

どんなに複雑な波の形であっても、すべて純音(音1~3のような単純は波の形の音)の重ね合わせで合成することができるのです。

 

これを重ね合わせの原理と言います。*2

 

重ね合わせの原理から考えると、実際の楽器の波形は非常に複雑であることから、
たくさんの音が含まれているということが改めてわかりますね。

 

(4)どうして「うなり」は発生するのか

さて、長らく音について説明してきましたが、ここで本題です。

なぜ「うなり」は発生するのでしょうか?

 

440Hzと441Hzの合成波のうなり

 

周波数がわずかに違う2つの音が重なったときを考えてみます。

今回は図形をわかりやすくするために、50Hz51Hzの音で検証しましょう。

 

0~100msの様子

「ms」とは1000分の1秒のことです。

100msまでの波形は↓の図のようになっています。

 

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0~100msの時の合成波

50Hzも51Hzも似たような形をしていて、波形がずれていません。

合成した波形も純音に近い形をしていますね。

しかし、2つの音の周波数がわずかに異なるので、それぞれの波形は時間がたつにつれてずれていきます。

 

450~550msの様子

450~550msでは、2つの音の波形のずれがちょうど山1つ分になり、合成波に大きな変化が生じます。

この時間のとき、2つの音の波形はちょうど逆向きの関係になっていて、それぞれの音が打ち消し合い、合成波の振幅が非常に小さくなります。

この状態のあとには、また2つの音の波形は少しずつ合わさっていって、ちょうど1000msでは、2つの音の波形のずれがちょうど山と谷1つ分になり、0sの状態と同じになります。

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450~550msの時の合成波の様子

0~2000msの様子

2つの音の周波数がわずかにずれているために、合成波の振幅が大きく変化することがわかりました。

上記では100msの間の波をみていましたが、もう少し視野を広げて、2000msの間の波形を示したのがこちらです。

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0~2000msの時の合成波

1秒間に1回の頻度で振幅がほとんど0になっていることがわかります。

 

この「振幅の周期的な変化」が「うなり」です。

 

どんなことが起きているのかの説明と合わせると↓のようになります。

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0~2000msの時の合成波(解説付き)

このように周波数が1Hzずれると、2つの音の波が1秒間に山と谷1個分ずれるので、1秒間に1回うなりが発生します。


ちなみに、周波数が2Hzずれると、1秒間に山と谷2個分それぞれの波形がずれるので、うなりが1秒間に2回生じるようになります。

 

つまり50Hz51Hzで説明しましたが、440Hz441Hzでも同じうなりが起きます。

 

聞く分には440Hzの方が聞きやすいので、440Hzと441Hzで音源を用意しました。

実際にうなりの音を聞いてみましょう。

440Hz

441Hz

440Hzと441Hzの合成波

 

個別の音では同じ音に聞こえますが、合わせるとウネウネしていますね。

これが「うなり」です。

<補足~アニメーションを使った説明>

なるべく静止画でもわかるよう気を付けて解説をしましたが、中村加津雄先生のHPに非常にわかりやすいアニメーションがあります。

また、自分でうなりを発生させることができるCG教材もありますので、様々なうなりを体感してみてください。

高校 物理 教材(http://physics7.starfree.jp/phy/sound/index.html)

 

チューニングではうなりを頼りに音合わせをしています。

うなりが聞こえなくなるように音程を合わせるのです。

逆に、演奏時にうなりが発生しないようにチューニングをしているとも言えます。

 

うなりは基本的に不快な音とされています。

とくに指揮者や耳の肥えた聴衆はうなりに敏感です。

 

なので、指揮者はうなりが少なくなるように合奏します。

合奏でチューニングとか音程合わせが多くなるのはこのためです。

 

音程合わせではメンバーの前で少ない人数で(ひどいときには1人で)吹かされることが多いです。

なんだか自分が下手さを晒しものにされているような感覚がして、吹きにくいし苦手な練習と感じている人も多いと思います。

 

そこで、次項では音程合わせをうまく乗り切るテクニックを紹介します。(^^)/

どうしてもチューニングや音程合わせが嫌だ!という人はぜひ実践してみてください。

 

Ⅲ.今日から使える「チューニング」をうまく乗り切るコツ

さて、うなりの仕組みがわかったところで、明日から使える「チューニング」を乗り越えるコツを伝授します。

 

音程はすぐに合わせられるものではありませんので、チューニングの時間が苦痛という方は、音程が合うようになるまでの一時しのぎとしてぜひご参考ください。

 

ここで紹介しているコツはあくまでその場しのぎにしかなりませんので、いずれは音程を合わせられるようになりましょう。(^^)/

 

1.初心者にはあまり意味がない「チューニング」

まずは第1のコツは「初心者にとってチューニングはあまり意味がない」ということを知ることです。

これはチューニングに対する心構えの部分で、コツでも何でもないように思えますが、非常に重要なことです。

 

実は、「チューニング」は以下の2つスキルがそろって初めて意味を成す作業です。

 ①奏者は音程がコントロールできる
 (Bの音を吹くたびに無意識に音程が変わることがない)

 ②基準音とそのほかの音程の関係を理解している
 (Bの音程が分かれば、ほかの音の音程も理解できる)

 

せっかくチューニングをしても、次に同じ音を出すときに音程が変わってしまっては意味がありません(①のスキル)。

また、チューニングはAもしくはBでしか行いませんので、基準音からほかの音の音程を推測できないと、基準音以外の音程はバラバラなので意味がないのです(②のスキル)。

 

このようにチューニングには2つのスキルが必要ですが、このスキルを完全に備えている人はもはや上級者レベルです。

チューニングがうまくいかないのは、そもそもチューニングには上級者レベルのスキルが必要だからです。

 

最初から音程の合う人はほとんどいません。

チューニングが合わないから自分はダメなんだということはありません。

まずはチューニングを合わせることはとても難しく、合わない方が当たり前だという気持ちでいてください。(^^)/

 

2.どのレベルの「チューニング」を求められているのか把握しよう

チューニングがどんなに初心者にとって難しいにもかかわらず、指揮者はお構いなしに音程を合わせることを要求してくる場合があります。

 

これは指揮者が高いレベルのチューニングを目指しているからかもしれません。

 

実はチューニングにも「程度」がありますので、ご自身のバンドではどの程度のチューニングが求められているのか把握しましょう。

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チューニングのレベル表

Lv.1のチューニング

Lv.2のチューニング

Lv.3のチューニング

Lv.4のチューニング

Lv.5のチューニング

 

今回ご紹介するコツが使えるのはせいぜいLv.3程度までです。

 

しかし世の中のほとんどのバンドはLv.3に収まると思いますので、多くの人には使っていただけると思います。

逆にLv.4以上のバンドでは今回のコツを使っても指揮者に見破られてしまう可能性が高いです。

今回のコツはその場しのぎにしかなりませんので、Ⅳ.の練習方法や先輩たちを参考に、いち早く音程を合わせるスキルを身につけましょう

 

3.乗り切るだけなら「小さい音で吹くべし!」
  上手くなりたいなら「同じ音量で吹くべし!」

さて、いよいよお待ちかねの「チューニング」をうまく乗り切るテクニックをご紹介します。

 

「チューニング」をうまく乗り切るテクニックとは

基準音よりもかなり小さな音で吹く

ことです。

 

実際に聞き比べてみましょう。

 

通常のLv.2のチューニング

①音量10の440Hzの音

②音量10の443Hzの音

①と②の合成音

 

小さな音で吹いた場合のLv.2のチューニング

③音量10の440Hzの音

④音量2の443Hzの音

③と④の合成音

 

③と④の合成音ではすこし「うなり」が目立たなくなったことがお分かりいただけましたでしょうか?

 

 この時の波形は下図のようになっていて、小さく吹くことで振幅の差が縮まることがわかりますね。

うなりは「合成波の振幅が周期的に変動する」という現象ですから、振幅の差が小さくなると、うなりは目立たなくなります。

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音量による「うなり」の変音

なぜ音量を変えるだけで、うなりの振幅の差が小さくなったのでしょうか?

それは、山1分波形がずれたときに音がお互いに打ち消し合おうとしますが、その際に片方だけが強いので、完全に打ち消すことができないからです。(下図の右下)

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音量差があるときの合成波(解説付き)

 

このように、2つの音に音量の差があるとき、うなりの振幅は小さくなります

 

よって、チューニングの時だけわざと基準の音よりも小さく吹くことで、うなりが目立たなくなり

指揮者にスルーしてもらえる可能性がグッと上がる

ということです。

 

ぜひお試しください。(^^)/

 

逆に、基準の音と全く同じ音量のとき、うなりは一番目立つようになります。 

小さな音でチューニングをごまかしているうちは、絶対に音程は合いませんので、次で紹介する練習でスキルを身に着け、自身が出てきたら徐々に音量を上げていきましょう。

 

Ⅳ.「チューニング」が怖くなくなる練習方法

楽器演奏において、音程を合わせの練習はとても大切です。

 

音程を合わせられるようになれば、チューニングは怖くありませんし、自分の音と他の楽器の音がよく混ざって本当に美しいサウンドが鳴ります。

さらに、バンド全体の音程がまとまると奏者の一体感も強まって、演奏がより楽しくなります。

 

ぜひ今回ご紹介する練習を取り入れて、チューニングを克服するだけでなく、より楽しい楽器ライフを手に入れてください。

1.安定した音程で音を伸ばせるようになろう

Ⅲ.1.でも説明しましたが、チューニングを合わせられるようになるためには、以下の2つのスキルを身に着ける必要があります。

 ①奏者は音程がコントロールできる
 (Bの音を吹くたびに無意識に音程が変わることがない)

 ②基準音とそのほかの音程の関係を理解している
 (Bの音程が分かれば、ほかの音の音程も理解できる)

 

2つを同時に会得することは難しいので、まずは①について練習しましょう。

 

(1)mfで8拍(♩=60)、一定の音程で伸ばせるようになろう

まずは、ロングトーンと呼ばれる練習から始めることお勧めします。

 

ロングトーンは特定の音をmfで8拍(♩=60)伸ばす練習のことです。

あまり楽しい練習とは言えませんが非常に重要な練習です。

 

8拍間伸ばしているうちに音程が下がったり、上がったりしてしまうと、チューニングをしてもすぐに音程が変わってしまうので意味がありませんし、曲中でほかの人と音程を合わせることもできません。

 

まずは、最も出しやすい1つの音からでよいので、mfで8拍間音程を死守できるようにしましょう。

 

目指すは「8拍間、チューナーの針がほとんど動かない」という状態です。

この時チューナーの針が真ん中である必要はありません。

まずは音程を合わせるよりも、音程を維持することに集中してください。

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ロングトーンの楽譜1(ここではドにしますが、音はなんでもいい)

音程のチェックには、「チューナー」という道具がおすすめです。

「チューナー」は音程を図ってくれる機械なのですが、最近ではスマホのアプリにもありますので、アプリでもいいかもしれません。

~チューナーを使うときの注意事項~

チューナーは一つの音しか拾うことができません。

自分の音ではなく、ほかの人の楽器の音を拾うことが多くあります。

周囲に他の音があるときは、チューナーマイクを使うようにしましょう。

チューナー用マイク

チューナーアプリ用マイク

(2)全音階の2オクターブ(15音)で同じように練習しよう

最も吹きやすい音で、8拍間チューナーの針が動かない状態を作れたら、その音を中心に上下1オクターブずつの全音階でも同じ練習をしましょう。

 

このときも各音で、チューナーの針が真ん中である必要はありません。

まずはリラックスして、8拍間音程を維持することだけに集中してください。

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ロングトーンの楽譜2
(3)半音階の2オクターブ(23音)で同じように練習しよう

2オクターブの全音階で音程を維持できるようになったら、次は半音階でも同じことを練習しましょう。

 

8拍間チューナーの針が動かない状態を作りましょう。

ただし、チューナーの針が真ん中を指す必要はありません。

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ロングトーンの楽譜3

ここまでくると音程の維持の仕方がある程度わかってくると思います。

少し余裕も出てきたら、どのようにアクションしたら音程がどう変化するのかにも注意を向けましょう。

次の音程を合わせる練習につながります。

 

(4)半音階の2オクターブ(23音)で音量を変えて練習しよう

 (3)の練習に慣れてきたら、音量を変えてfやpでも行ってください。

音量が変わるだけでも音程がグッと不安定になると思います。

 

くどいですが、ここでもチューナーの針が真ん中を指す必要はありません。

8拍間チューナーの針が動かないということだけに集中してください。

 

ここまでくると、どのようにアクションしたら音程がどう変化するのかについても、かなりわかってくると思います。

 

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ロングトーンの楽譜4

さらには、pで吹き始めてクレッシェンドしてfにするなど、8拍間の中で音量を変えて練習すると効果的です(上の楽譜の①~④)。

 

これでもチューナーの針がびた一文動かない状態が作れるようになれば、音程の維持については完璧です

 

以降の練習が非常にスムーズに進みます。(^^)/

 

2.「うなり」聞いて、音程を調整しよう

(1)「うなり」を聞こう

ロングトーンで音程を一定に保てるようになったら、次は基準の音を鳴らしながらロングトーンを行いましょう。

そして、基準音と自分の音を聞き比べて、「1秒間に何回うなりが発生しているか」を注意深く聞きましょう。

 

チューナーには音程を再生する機能があるので、基準音にはチューナーを使うことをお勧めします。

ただし、チューナーの再生音は楽器音に比べると小さい場合が多いので、可能な限り音を大きくする工夫をして、再生音を楽器音と同じ音量にしましょう。

私の場合は基準音をイヤホンで聞いたりアンプに繋いだハーモニーディレクターを使っていました。

 

音量差があるとうなりは目立たなくなりますので、基準音の音量には気を配りましょう。

 

可能であれば、上級者の人と一緒にロングトーンをして、その際のうなりを注意深く聞きましょう。

同じ楽器同士であれば、音量が近くなりますので、うなりがより感じやすくなります。

 

(2)音程を調整しよう

うなりを聞けるようになったら、うなりが少なくなるように音程を調整しましょう。

まずは音程を下げてみて、うなりの数が増えたなら音程を上げましょう。

うなりが減ったならそのまま音程を下げていきましょう。

そして、うなりが0回になったら、そこで音程をキープしましょう。

 

ここでの注意事項として、チューナーの針を中心に合わせるという音程合わせの方法

絶対にしないでください。

 

耳を使わずにチューナーの針を見て音程を合わせる癖がつくと、
次項の音程のイメージを持つという練習が非常に困難になります。

 

必ず基準音と自身の音とのうなりを聞いて音程を合わせるようにしましょう。

 

この作業をロングトーンのときと同じように最終的には2オクターブの半音階でやりましょう。

この際、全体的に音が低いときは管を入れ、音が高いときは管を抜くなどして、調整してください。

 

3.正しい音程のイメージを持って、イメージ通りの音を出そう

(1)正しい音程のイメージを持とう

2.の練習を続けることで、だんだんと自分の音程の癖に気が付いてくると思います。
(Aがいつも高めになるなど)

 

おおよそ自分の癖がつかめてきたら、音の出だしからうなりが0回になるように音程を狙いましょう。

 

ここでのポイントは、

音を出す前に「頭の中で基準音を鳴らす」

ことです。

頭の中で鳴っている基準音に音程が合うように、自身の音を出しましょう。

 

ここまで練習すると、各音に対してどの程度音程アクションをすれば音程が合うか大体わかっていると思うのですが、

「次はいつも高くなるAだからとりあえず低めに吹こう」と考えて吹くのはNGです。

 

「基準となるAの音を吹く直前に頭の中で鳴らして、それと同じ音を出す」という思考の順番が非常に肝心です。

 

この「基準となる音を頭の中で鳴らす」ということがすなわち「正しい音程のイメージを持つ」ということで、チューニングに必要なスキルの②である「基準音とそのほかの音程の関係を理解している」ということなのです。

 

(2)イメージ通りの音を出そう

頭の中に正しい音程をイメージできるようになったら、あとはそれを実際に音として出すだけです。

 

「頭の中の基準音」と「実際に楽器から鳴っている音」が合致しているかどうかを調べるには、録音が効果的です。

 

ロングトーンを録音しておいて、あとから実際に基準音と照らし合わせながら聞いてみてください。

思いのほか音程がずれていると思います。

 

これを繰り返すことで、だんだんと「頭の中の音」「実際に出る音」が近くなっていきます。

 

「基準となるAの音を吹く直前に頭の中で鳴らして、それと同じ音を出す」というスキルを獲得できれば、もうチューニングは怖くありません。

次に紹介する方法でチューニングを行えば、自裁に音程を合わせることができます。

4.もう怖くない!チューニングの方法

以下の2ステップでチューニングを行えば、もう完璧です。

意のままの音程で演奏することができるようになると思います。(^^)/

 

(1)「実際に鳴っている基準音」と「頭の中の基準音」の音程を合わせる

練習の3.でも説明しましたが、楽器を演奏するときには、最初に頭の中に基準音を鳴らすことが大事です。

よって、チューニングでは最初に頭の中の基準音を合わせます。

 

Aの音でチューニングする場合、最初に「実際に鳴っているAの基準音」「頭の中のAの基準音」の音程を合わせます。

 

「頭の中の基準音」は結構曖昧なので、日によって音程感覚に差があります。

日によっては440HzのAの音が高く感じたり、低く感じたりするものです。

 

「頭の中のAの基準音」の調整ができれば、あとはそれをもとに他の音の基準音も頭の中で作ります。

「Aがこの音程ならCはこのくらいの音程だな」という感じです。

 

(2)「頭の中の基準音」と「実際に楽器から鳴っている音の音程」の音程を合わせる

頭の中の調整が終わったら、次に楽器の調整を行います。

 

まずは、「基準のAの音」が鳴っている中で、先ほど合わせた「頭の中の基準音」を狙って音を出してみます。

その際、「頭の中の基準音」「実際に楽器から鳴っている音の音程」が違っていたら、管の抜き挿しをして、頭の中の基準音と同じ音程の音が出るように楽器を調整します。

この時「実際に鳴っているAの基準音」とのうなりを頼りに音程を調整するのです。

 

これで、チューニングは完了です。

 

自信の思いのままの音程が出せるようになるまでには、相当な努力が必要ですが、音程が合うようになれば合奏はより楽しくなりますし、楽器の演奏スキルも上達します。

 

時には経験者や楽器の講師に習うこともよい刺激になると思います。

 

ぜひ継続的に練習を続けて、ご自身のスキルアップを目指してください!(^^♪

 

Ⅴ.配布物

 今回波形のを作成するためにエクセルシートを作成しました。

今回ご紹介した波形は周波数が近しい合成波の波形でしたが、複雑な合成波の波形も作成可能です。

例えば、和音の中でのうなり(平均律)やオクターブ違いのチューニングでのうなり(220Hzと441Hzのとき)の波形など 。

ぜひご活用ください。

www.dropbox.com

 

Ⅵ.参考

チューニングの音源は「WaveGene」というソフトを使って作成しました。

簡単に合成波を作れるので、ぜひご活用ください。

efu.jp.net

 

最後までお読みいただき本当にありがとうございます。

今回ご紹介したテクニックで、うまくチューニングを切り抜けたり、チューニングをうまく活用できたりできれば大変幸せです。

 

次回の記事では「スケール」について解説しています。

ドュアーって何?

長調短調って何が違うの?

スケール練習のおすすめの方法は?

といった疑問にお答えしています。(#^^#)

dormitory0108.hatenablog.com

 

*1:小村 公次 著「音楽のあゆみと音の不思議4 音楽のしくみとルール」4Pより引用

音楽のしくみとルール (音楽のあゆみと音の不思議)

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  • 作者:小村 公次
  • 発売日: 2019/03/18
  • メディア: 単行本
 

 

*2:

2) 青木 直史 著「ゼロから始める音響学」24P参照

ゼロからはじめる音響学 (KS理工学専門書)

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  • 作者:青木 直史
  • 発売日: 2014/03/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)