これだけは知っておきたい合奏用語かんたん解説!! 第6回 シンコペーション
指揮者「そこはシンコペーションだからもっとはっきり演奏して」
奏者(”シンコペーション„ってなんだ??)
皆さんこんにちは!
このブログの筆者のドミトリーです!(^^)/
このシリーズは合奏用語解説と銘打ちまして、吹奏楽の合奏でよく使われる言葉について解説をしています。
初めて合奏に加わる人にもわかるよう簡単に解説しますので、この記事を読んで指揮者の言っていることをどんどん理解していきましょう!(^^♪
前回の第5回では、「アーティキュレーション」について解説しました。
指揮者に「アーティキュレーションを合わせて」って言われたけど、何のこと?(´;ω;`)
という方向けに、たくさんの実例を使って説明しています。
ぜひご一読ください。(^^♪
さて、第6回にして最終回の今回は「シンコペーション」について解説します。
シンコペーションは特にポップスの曲を合奏しているとよく出てくるワードですね。
予想を裏切ることで聞き手を引き付けるシンコペーションは非常に重要な要素です。
ぜひシンコペーションを理解して、指揮者の意図をくみ取れるようになりましょう。
そこで今回は
・強拍と弱拍について(拍子)
・シンコペーションとは
・シンコペーションの実例
・シンコペーションの演奏上の注意点
について解説していきます。
この記事を読めば、あなたはもうシンコペーションマスター!
シンコペーションをうまく使って、より動きのある音楽を楽しんでください(^^♪
ーーー簡単な自己紹介ーーー
私は現在とある一般サークルのバンドで指揮者をしています。
しかしこれまで音楽の勉強を真面目にやったことがない「愚か者」でした。
ドラッカーの本を読んで、これを猛省し、現在は音楽の勉強をするようになりました。
ここでは音楽初心者から経験者まで、ご自身の音楽活動に役立つように、私が勉強したことをわかりやすく発信していきます!
Ⅰ.強拍と弱拍について(拍子)
では早速シンコペーションの説明をいたしましょう!!
と行きたいところですが、シンコペーションの説明の前に、まずは強拍と弱拍について解説します。
速くシンコペーションについて知りたいよう(/ω\)
という方は飛ばしていただいても大丈夫ですが、シンコペーションを理解するためにはとても重要な要素になりますので、この機会にぜひ覚えてしまいましょう!
1.拍子の表し方
楽譜の中で最初に書いている5/4と6/4というこの数字。
これは拍子記号といって、一小節の中にどの音符が何個の音符が入るかを示しています。
分母が音符の種類(8なら8分音符、4なら4分音符など)を、
分子は音符の数(4なら4つ、6なら6つ)を示しています。
4拍子とか3拍子とかはこの記号によって決まるのですね。
強拍と弱拍にめちゃくちゃ関係していますので、しっかり覚えましょう。
2.音楽にとって重要な拍子感
音楽にとって拍子は非常に重要な要素です。
拍子があると、曲にまとまりを感じることができ、音楽の次の展開を少しだけ予想できるようになるのです。
では、ビゼーの歌劇『カルメン』から「闘牛士の歌」を例に実際に聞いてみましょう。
拍子がない場合
4/4拍子の場合(原曲)
いかがですか?
拍子がない場合は、すべての拍が同じ大きさで、まとまりがありません。
そのため、次のまとまりがいつ来るのか全く予想ができず、聞き手に緊張がずっと続いてしまいます。
一方で、4拍子では4拍毎に強い音や弱い音が規則的に演奏されており、4拍毎で一区切りがつきます。
これにより、次のまとまりを容易に予想できるため、聞き手に程よい緊張と緩和が繰り返されて心地の良い音楽となります。
このように、次のまとまりを予想できるという点が音楽にとって非常に重要で、このまとまりの感じをここでは「拍子感」と呼びたいと思います。
拍子感があると、聴衆は予想通りの音が来るのか、それとも予想を裏切った音が来るのかと考えるため、音楽はより楽しいものとなります。
この面白さを例えるならドラマと同じことです。
恋愛系のドラマでは視聴者は「あぁきっとこの二人がくっつくのだろうな」という思わせぶりな要素が必ず盛り込まれます。
その予想が裏切られるのか、もしくは予想通りいくのか、ことの顛末を見届けることドラマの楽しみがあると思います。
音楽ではこれと同じことが各小節毎に繰り返されるのです!!
めちゃくちゃ楽しい!!(*'▽')
3.拍子感を出すための強拍と弱拍
さて、音楽にとって拍子感が非常に重要ということは、分かっていただけたかと思います。
では、演奏で拍子感を出すにはどうしたらよいのでしょうか?
実は、拍子感を出すのはとても簡単。
1小節の中で強く演奏する拍と弱く演奏する拍を設けるだけです。
うん、とっても簡単!(#^^#)
この時、強く演奏する拍を強拍、弱く演奏する拍を弱拍と呼びます。
そして、各拍子によって強拍と弱拍のタイミングは決まっています。
いくつか例を挙げますので、実際に聞いてみましょう。
※音の強さは、強拍>中強拍>弱拍です。
2拍子
3拍子
4拍子
強弱をつけることで拍子感が生まれることを実感いただけましたでしょうか?
シンコペーションではこの強拍と弱拍が非常に重要になりますので、ぜひこの機会に覚えてしまいましょう。
Ⅱ.シンコペーションとは
さて、いよいよシンコペーションについての説明です。
まずはシンコペーションを聞いてみましょう。
楽譜で赤く示した部分がシンコペーションです。
先ほどと比較して強拍のタイミングがずれていることにお気付きでしょうか?
具体的には本来弱拍であるはずの4拍目の裏がシンコペーションにより強拍になっています。
そう!シンコペーションとはズバリ、
「強拍のタイミングをずらす」
ことなのです。
ちょっと待ってくれ
ついさっき「強拍と弱拍のタイミングは拍子で決まる」と説明したばかりじゃないかとツッコミが入ってしまいそうですが、
シンコペーションの神髄はこの「ツッコミ」にあります。
先ほども少し触れましたが、拍子感があると、聴衆は強拍のタイミングを予想しながら音楽を聴きます。
この予想を裏切るというのがシンコペーションというわけです。
基本通りに来るだろうと高を括ってる聴衆に、強拍のタイミングをわざと外すことで「予想外」の驚きを与えましょう!
これがシンコペーションの肝です。
シンコペーションの発生条件
続いてはシンコペーションの発生条件について説明します。
シンコペーションは「弱拍音が同じ音程の強拍音にタイで結び伸ばされているとき」に発生します。
弱拍と強拍がタイで繋がると、弱拍音だった音に強拍のアクセントが転移して、強拍のタイミングがずれます。
シンコペーションなし
シンコペーションあり
また、シンコペーションは8分音符でも発生します。
8分音符で出てくる「裏拍」はいつも最弱です。
なので、裏拍とタイで音がつながった場合はいつもシンコペーションになります。
※音の強さは、強拍>中強拍>弱拍>弱弱拍です。
シンコペーションなし
シンコペーションあり
強拍と弱拍がタイで接続されたときにはシンコペーション
とても重要なので覚えておきましょう!
Ⅲ.シンコペーションの実例
さて、シンコペーションは通常の拍子感から逸脱するため、聞き手にとって非常に強いアクセントになり、実に多くの曲で活用されています。
ここではいくつかのシンコペーションの実例を紹介しますので、強拍がずれる「予想外」を楽しんでください。
シベリウス 交響詩『フィンランディア』
Sibelius: Finlandia, op. 26 — Karajan
楽譜の部分は動画の5:33~
この『フィンランディア』では多くのシンコペーションが使用されていますが、特に上記の部分では1小節の中で何度もシンコペーションが現れます。
『フィンランディア』はフィンランド人の愛国心をとても刺激するもので、当時ロシアからの独立運動が盛んだったフィンランド人から大人気でした。
あまりにフィンランド人の愛国心を刺激するため、ロシア政府により演奏を禁止されてしまうほどです。
上記の部分では、フィンランド人の湧き出る愛国心が常軌を逸した強さであることを、通常の拍子感から逸脱するシンコペーションを多量に使うことで、うまく表現されていると感じます。
このように、心情が最も達したときにシンコペーションが使用されることがあります。シンコペーションのエモさ、伝わりましたかね。(^^♪
ストラヴィンスキー 舞踏音楽『火の鳥』より「カスチェイ王の魔の踊り」
楽譜の部分は動画の0:30~
この曲はまさに、シンコペーションの嵐と言えるほどにシンコペーションが多用されています。
シンコペーションのもつリズム的な違和感が、異形のものである魔王カスチェイ王の下部達の不気味さを際立たせていますね。Σ(・□・;)
米津玄師 『Leomn』
楽譜の部分は0:00~
たまには最近の曲も例に使ってみようと思います。
『Lemon』の冒頭ではシンコペーションがふんだんに使われています。
普段とは異なるリズム感と「夢ならば どれほどよかったでしょう」という歌詞と相まって、焦燥感と「夢」の非現実感が非常に際立っていますね。
この曲は2018年の紅白でバックダンサーが不気味だと話題になりましたが、あのダンサーの人はシンコペーションによるリズムの違和感をあのような形に表現したのかもしれません。(いや、違うか)
Ⅳ.演奏上の注意点
シンコペーションの演奏にはコツが必要です。
特に以下の点によく注意して、効果的なシンコペーションを演出しましょう。
- テンポやリズムを崩さない
- 聴衆をしっかりと騙す
- シンコペーションの意図を考える
一つずつ解説していきましょう。(^^)/
1.テンポやリズムを崩さない
シンコペーションの演奏で、最も陥りやすい失敗がこれです。
聴衆を騙そうとして、奏者の拍子感も一緒にずれちゃうという、まさにミイラ取りがミイラになっている状況です。
シンコペーションの演奏では、隠された強拍をしっかりとカウントすることが重要です。
隠された強拍をカウントすることで、シンコペーションの後、元の拍子感に確実に戻ることができます。
といっても最初はなかなか難しいので、おすすめの練習方法を紹介します。
- 一度タイを消したり、音を分割したりして、シンコペーションを消す。
- この状態で繰り返し練習をして、隠された強拍のタイミングを体に染み込ませる。
- 隠された強拍のタイミングが染みついたら、楽譜通りに音を連結して、シンコペーションで強拍をずらす。この時、シンコペーションで隠された強拍を心の中で演奏する。難しい場合はもう一度2.に戻りましょう。
何度も書いていますが、シンコペーションは安定した拍子感の中でそれを裏切るという小技です。
なので、シンコペーションの前後ではしっかりと元の拍子感を維持できるように練習しましょう。
2.聴衆をしっかりと騙す
次によくある失態はシンコペーションをしたツモリです。
これは4拍子の曲のときによく起こります。
3拍目の強さと、シンコペーションした4拍目の強さに変化が少なく、聞き手にその意図が伝わっていないという事態です。
これは、先ほどの場合とは逆で、隠された強拍をカウントしすぎていることが問題です。
シンコペーションは本来のリズム感から一時的に離脱することが重要です。
4拍目であろうと、シンコペーションでは1拍目と同じ強さです。
清水の舞台から飛び降りる気持ちで、思い切って突っ込んでみましょう。
3.シンコペーションの意図を考える
さて最後に紹介するのは、シンコペーションの表現が一辺倒で場面に沿っていないという失態です。
シンコペーションに少し慣れてきた人が陥りやすい罠ですね。
本来、シンコペーションはなくても音楽は成立します。
シンコペーションが指示されている場面では、作曲者が意図的に聴取を裏切りたい場面ということです。
背景にどのような意図があるのか一度考えて、自分なりの解釈をもって演奏しましょう。
といってもこの辺りは経験がものをいうようになってきますので、わからない場合は指揮者に聞くか、パートで話し合ったりするとよいと思います。
Ⅴ.まとめ
さて、今回はシンコペーションについて詳しく紹介していきました。
シンコペーションは強拍と弱拍がタイで繋がったときに発生します。
シンコペーションでは強拍のタイミングがずれるため、聴衆の拍子感からは「予想外」の動きになります。
この「予想外」によって、聞き手にはとても良いアクセントになるので、シンコペーションは古くから非常に多く使われているという内容でした。
ぜひ、シンコペーションをものにして、聴衆を意のままに裏切ってください。
そうすることで、あなたの音楽ライフはより一層深みが増すことでしょう。
ここまでお読みいただき誠にありがとうございます。(#^^#)
さて、本シリーズでは合奏で頻繁に出てくるワードについて解説してきました。
もっと簡単にまとまると予想していたのですが、意外とまとめるのが難しく、我ながらびっくりしました。
これまでの記事を読んでいただければもう合奏は怖くありません。
というか、その辺のパートリーダーよりはよっぽど詳しくなったでしょう。(^^♪
ほかにも解説してほしいワードがあれば記事を作りますので、コメント欄までよろしくお願いいたします。(感想だけでもOKです。)
他記事では音楽の歴史についての記事もまとめています。
よかったらご一読ください。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
それではまた、別の記事でお会いしましょう!